アスベスト(石綿)は、天然に産出される繊維状の鉱物で、クリソタイル、アモサイト等の6種類の総称です。
アスベストは、優れた性質(耐熱性、防音性、絶縁性など)を持つうえに、安価で入手できることから、長期間にわたり建築材料等として広く利用されてきました。
一方で、アスベストを吸い込むと、肺がんや中皮腫(胸等の膜にできるがん)などの深刻な健康被害を引き起こすことが分かっています。このため、昭和50(1975)年には吹付けアスベストの使用に対する規制が始まりました。その後、段階的に規制が強化され、現在では、アスベストの輸入・製造・使用等が禁止されています。
アスベストについては、技術者コラムでも詳しく取り上げています。
・【技術者コラム】アスベストについて
・【技術者コラム】アスベスト分析について
・【技術者コラム】工作物の石綿(アスベスト)事前調査は有資格者の実施が義務化
・【技術者コラム】災害時の環境モニタリング調査
アスベストの規制は、わかりにくいという話をよく聞きます。この理由は、各省庁が所管する範囲で政策を進めており、規制する法律が多岐にわたっているからです。今回は、関係省庁がどのように連携してアスベスト政策を進めているかをご紹介します。
国のアスベスト政策
- 国土交通省
国土交通省は、建築物の管理や改修等に関する規制を行っています。
建築基準法では、吹付けアスベストやアスベスト含有吹付けロックウールについて、増改築時等に除去等を求めるほか、飛散のおそれがある場合には除去等について勧告・命令等を行うことができます。
次に、民間建築物における吹付けアスベスト等の使用・対策状況を整理したアスベスト調査台帳の整備を進めています。毎年、民間建築物における吹付けアスベスト等の飛散防止対策に関する調査結果を公表しており、令和8(2026)年2月6日の発表では、民間建築物(昭和31(1956)年から平成元(1989)年までに施工され、延べ床面積が1,000平方メートル以上のもの)の96.8%で、飛散防止対策の対応がとられているとのことです。
さらに建設リサイクル法(環境省と共管)では、建築物を解体するときに、コンクリート、木材などを分別してリサイクルすることを求めています。そのため、解体工事の前には、建築物にどのような材料が使われているかを事前に確認する必要があります。アスベストについても、解体工事に先立ち、こうした事前確認が行われています。
- 厚生労働省
厚生労働省は、主に労働者へのアスベストばく露防止のため、石綿障害予防規則での規制を行っています。
建築物、工作物、船舶の解体・改修工事を行う前には、建築材料等にアスベストが使用されているかの事前調査を行い、使用されている場合は、労働者がアスベストにばく露しないよう、飛散防止措置や呼吸用保護具の使用等などを講じながら作業を行うことを求めています。
このほか、輸入製品へのアスベスト混入事案への対応や、分析方法の整備なども進めています。
- 環境省
環境省は、一般環境へのアスベスト飛散防止のための規制を行っています。
大気汚染防止法では、建築物・工作物の解体・改修工事を行う前に、建築材料等にアスベストが使用されているかの事前調査を行い、使用されている場合は、アスベストの飛散を防止するため、作業基準を守ることを義務付けています。
また、廃棄物処理法では、アスベストを含有する廃棄物の運搬や処分について規制を行っています。
このほか、一般環境中の濃度測定や、災害時の飛散防止マニュアルの整備なども進めています。
このように、解体・改修工事に関する規制は、厚生労働省の石綿障害予防規則と環境省の大気汚染防止法で似ている部分も多くあります。ただし、厚生労働省は労働者へのばく露防止、環境省は周辺環境への飛散防止と、それぞれ異なる目的で制度を所管しています。
一方で、必要となる事前調査や飛散防止措置には共通する部分も多いため、似た内容の規制が設けられているほか、作業に係るマニュアルを2省連名で公開する等、連携して解体・改修工事の対策を行っています。
このほか、建築材料にアスベストが含まれているかどうかを調査する、建築物石綿含有建材調査者など の資格制度を3省共同で所管しています。石綿障害予防規則や大気汚染防止法により、建築物の解体等を行う際には、これらの有資格者がアスベストを含有する建築材料の使用の有無について事前調査を行うことが義務付けられています。
このように、アスベスト対策は、建築物の管理、労働者のばく露防止、一般環境への飛散防止、廃棄物処理等、それぞれ異なる目的に応じた複数の法令により規制されています。
そのため、制度全体が複雑に見える面もありますが、関係省庁が連携しながら、総合的なアスベスト対策が進められています。
当社では、調査・分析にとどまらず、アスベストに関する行政全体を見据えたコンサルティングを提供しています。
具体的には、国土交通省におけるアスベスト調査台帳の整備に向けた手法の検討や、環境省におけるより良い飛散防止制度の検討、各種マニュアルの改訂案の作成などの業務を請け負い、さまざまな提案を行っています。
アスベストに関するお困りごとがありましたら、ぜひお問い合わせください。(執筆:藤沢)
参考文献
・国土交通省「建築基準法による石綿規制の概要」
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/asubesuto/houritsu/071001.html
・国土交通省「民間建築物における吹付けアスベスト等飛散防止対策に関する調査(令和6年度)の結果
~飛散防止対策等の対応率が 96.8%に~」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001980487.pdf
・厚生労働省「事業主の方々へ(アスベスト)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/other/index_00003.html
・環境省「大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について」
https://www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/index.html
