本コラムでは、災害時に問題となるアスベスト飛散の危険性と、その実態を把握するための環境モニタリング調査について、実際の調査事例を交えて紹介します。

災害時のアスベスト飛散の危険性

地震や豪雨などの大規模災害が発生すると、私たちの生活環境は一変します。倒壊・損壊した建築物や大量に発生する災害廃棄物は、復旧・復興に向けて速やかに処理されなければなりません。

アスベストは、かつて多くの建築物の建材に使用されており、それらが倒壊・損壊等することによりアスベストが飛散する可能性が生じます。
その飛散したアスベストを吸い込むことで、健康被害を引き起こすおそれがあります。通常であれば、建物等を解体する前にはアスベストの事前調査が行われ、その調査結果を元に、アスベストを飛散させない方法にて解体が行われます。
しかし、突然やってくる災害時はアスベストの事前調査は行えません。そのため、災害時の建物の倒壊や解体、がれきの集積・分別作業では、通常よりもアスベストが空気中に飛散しやすい状況が生じます。避難している周辺住民の方々だけでなく、復旧作業に従事する作業員やボランティアの方々にもアスベストを吸い込むリスクが生じます。

復旧作業の陰で、こうした健康リスクが存在していたことは、まだ広く認知されていません。そのため、災害時におけるアスベストの飛散状況を把握する環境モニタリングが、現在、重視されています。

アスベスト飛散の要因と対応

災害時のアスベスト飛散の要因とその対応については次のように段階分けされており、いずれの段階においてもアスベストに関する環境モニタリングの実施が重要となります。

出展:災害時における石綿の飛散及びばく露防止に係る取り扱いマニュアル(第3版)より抜粋 
   (図は一部加工(赤枠、青枠の追加、飛散のおそれ等吹き出し))

住民の不安の解消、建築物等の解体及び廃棄物処理における適切な石綿飛散・ばく露防止措置を促す観点からも、状況に合わせたモニタリングの実施が求められます。

能登半島での環境モニタリングについて

弊社では、災害時における環境モニタリング調査にもこれまで対応してきました。

20241月に発生した能登半島地震では、環境モニタリング調査を実施できたのは同年5月頃となりました。
被災地では、依然として各所で道路の通行止めが続き、ナビ通りに進めない状況も多く見られました。
被災地へ向かうこと自体が容易ではない、そうした厳しい状況からの調査開始でした。

アスベストに関する環境モニタリングの測定箇所は、県職員の方と現場下見と協議を行い、避難場所、公共施設など主に人が集まる場所を選定し、公費解体前・解体中・解体後のアスベストの飛散が予測されるタイミング及びその前後のタイミングで測定を行いました。

測定は、捕集用フィルターを用いて空気中のアスベストを捕集する方法で行います。捕集用フィルターに、吸引速度10L/minで連続4時間(合計2400L)の空気を通し、そのフィルターに捕集された繊維を後日ラボで分析することにより、空気中のアスベスト濃度を調べます。

測定地点は、避難所等の対象施設へのアスベスト飛散の影響を把握できる敷地境界等の2箇所とし、空中のアスベストを捕集するフィルターホルダーは倒壊した建屋、解体等工事現場など発生源の場所と風向など考慮の上、測定地点を選定しました。測定時は、現場の気温、風向風速や周辺での災害廃棄物の解体、運搬作業などの現場状況の記録を合わせて行いました。

ラボでの分析では、フィルターに捕集された繊維状の数(アスベストに限らず)を位相差顕微鏡法で測定します。繊維状の数が1f/Lを超えた場合には、電子顕微鏡法でその繊維がアスベストかどうかを分析しました。

測定の結果については後日、石川県及び環境省のHP上に公表され、復旧・解体作業を進めるうえでのひとつの指標として活用されました。

 

最後に

災害時のアスベスト飛散リスクと環境モニタリングの重要性について紹介しました。

当社(ECC)では、これまでに培った経験を活かし、状況に応じた調査の実施、提案をさせていただきます。お気軽にご相談ください。(執筆:塩野)

参考文献

・災害時における石綿の飛散及びばく露防止に係る取り扱いマニュアル(第3版)
https://www.env.go.jp/content/000128426.pdf
発行元:環境省水・大気環境局大気環境課

・アスベストモニタリングマニュアル(第4.2版)
https://www.env.go.jp/content/000329963.pdf
発行元:環境省水・大気環境局大気環境課

・令和6年(2024年)能登半島地震の被災地における石綿(アスベスト)大気濃度調査の結果について
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kankyo/kankeihourei/ishiwata/ishiwata.html
発行元:環境省水・大気環境局大気環境課及び石川県