我が国では、たびたび大きな地震が発生し、近年は都市化や地球温暖化に伴う気候変動等の影響により、水害リスクが非常に高まっています。災害時における被災者の衛生確保や生活環境の保全、地域の早期復旧・復興のため、インフラ復旧と並んで、災害廃棄物の処理がその重要性を増しています。

1.災害廃棄物とは

災害廃棄物は、自然災害に起因して発生する道路啓開廃棄物、片付けごみ、解体廃棄物、仮設トイレし尿等をいい、市区町村等に処理責任があります。市区町村等は、被災後の混乱の中で通常の生活ごみの処理に加え、災害廃棄物の処理も行うことになります。

災害廃棄物は、数千~数百万トン規模で、自治体の平時の処理能力を大きく超えて発生する可能性があり、東日本大震災では2万トンもの災害廃棄物と1千百万トンの津波堆積物が発生しました。今後想定される南海トラフ地震では3億2千万トン、首都圏直下地震では1億1千万トンという膨大な量の災害廃棄物の発生が見込まれています。 

災害廃棄物は混合状態で発生する特徴があるため、適正に処理するには分別(選別)が必要です。組成の内訳をみると、コンクリートがらや建材等の不燃系廃棄物が多く、次いで木くずや柱角材等の可燃系廃棄物となりますが、津波、水害、土砂災害の場合には流木や土砂等が大量に混入します。災害廃棄物は一般廃棄物に分類されますが、性状は産業廃棄物に近いため、処理にあたっては民間事業者との連携が不可欠です。

2.仮置場と災害廃棄物処理

災害廃棄物の処理に当たって、はじめに直面するのは片付けごみの問題です。一度に大量に発生するため、一時的に受け入れる仮置場が必要となります。特に水害の場合には、水が引いた直後に片付けが始まるので、路上や空地などに排出されないよう、早急に仮置場を設置し、設置場所や受入方法(受入日時、受入品目、大きさ、分別の必要性、身分の証明等)を住民に速やかに周知することが求められます。都市部や高齢化が進む地域では、仮置場に自ら車で持ち込むことが困難なため、市区町村が収集運搬しなければならないことも想定され、ボランティアの力を借りることも考えられます。

続いて処理が進められる解体廃棄物や土砂類については、前処理や選別が必要なため、「二次仮置場」を設置することがあります。確保できる仮置場が限定されるため、発生するタイムラグを活用して、一次仮置場から二次仮置場へと機能を変更して運用するケースも増えています。

仮置場の候補地は、広さやアクセス等を考慮した上で、地域内に複数箇所確保しておくことが望ましいです。

仮置場を確保した後は、その適切な管理・運営のほか、災害廃棄物の処理・処分先の調整も必要となります。処理は被災自治体の処理施設で行うのが原則ですが、処理能力を超えたものや、自施設で処理できないものは、民間事業者や他地域の処理施設を活用します。過去の災害事例では、船や鉄道を利用して輸送し、処理した事例が多数確認できます。

3.災害廃棄物処理計画策定の必要性

図は、災害廃棄物の処理を行う上で検討が必要な事項を時系列別に並べたものです。発災直後から応急対応の初めにかけて、特に多くの調整や決定が必要になることがお分かりいただけると思います。これらを円滑に進めるためにも、災害廃棄物の排除、収集運搬、分別・保管、適正処理・再資源化の流れを確立し、地域の実情を踏まえた「災害廃棄物処理計画」をあらかじめ策定しておくことが重要になります。

計画には、平時の備えから応急対応、復旧・復興に至るまでの体制、災害廃棄物の処理方策(災害廃棄物の発生量や処理施設の処理能力等の推計、処理フロー、収集運搬、仮置場の設置・運営、公費解体、広域処理等)、住民等への啓発・広報等について規定します。

計画は、「災害時に活用できなかった」ということがないよう、適宜見直しを行います。組織等の名称変更や体制・枠組の修正だけではなく、災害廃棄物処理に関する新たな知見なども反映します。令和6(2024)年1月に発生した能登半島地震では、道路の寸断により山沿い集落の生活ごみやし尿の収集・運搬が困難な状況となり、片付けごみも高齢化による持ち込み困難にボランティアの受入制限が重なり、処理が大幅に遅れました。また、浄化槽の破損、処理施設の破損、宿泊施設の不足、公費解体の遅れ等も課題となりました。これらを教訓として、記載内容の検証・見直しを行い、計画の実効性を高めていくことが重要です。

4.最後に

今後、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、災害廃棄物処理についても、令和6(2024)年能登半島地震の教訓を踏まえた対策強化が行われる見込みです。

当社では、技術者コラム #45 でご紹介した「災害時の環境モニタリング調査」だけではなく、災害廃棄物処理計画の策定支援やマニュアル作成、(一社)持続可能社会推進コンサルタント協会を通じてのD.Waste-Netによる被災地支援(復旧・復興)等を行っています。災害廃棄物処理に関する課題や困りごとがございましたら、お気軽にお問い合わせください。(執筆:草柳)

参考文献

1)気象庁震度データベース検索
https://www.data.jma.go.jp/eqdb/data/shindo/
2)気象庁 災害をもたらした気象事例
https://www.data.jma.go.jp/stats/data/bosai/report/index.html
3)環境省災害廃棄物フォトチャンネル
https://policies.env.go.jp/recycle/disaster_waste/photo_channel/
4)令和6年度災害廃棄物対策推進検討会(第2回)資料2
https://www.env.go.jp/recycle/waste/disaster/earthquake/committee2/r6-02.html
5)災害廃棄物対策指針(改定版)及び同技術資料14-2、18-1
(平成30年3月 環境省環境再生・資源循環局災害廃棄物対策室)
https://policies.env.go.jp/recycle/disaster_waste/guidance/download/
6)災害廃棄物対策推進シンポジウム(平成29年12月24日開催)発表資料「鉄道コンテナによる災害廃棄物輸送」(日本貨物鉄道株式会社)https://warp.ndl.go.jp/web/20180501090356/kouikishori.env.go.jp/action/d_waste_net/171214symposium.html
7)令和6年能登半島地震で発生した災害廃棄物の広域輸送による広域処理が始まりました(令和6年7月11日国土交通省港湾局海洋・環境課プレスリリース)
https://www.mlit.go.jp/report/press/port06_hh_000294.html
8)令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について(報告書)(令和6年11月)
https://www.bousai.go.jp/jishin/noto/taisaku_wg_02/index.html
9)「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案」の閣議決定について
https://www.env.go.jp/press/press_04100.html