「海洋プラスチック汚染」「マイクロプラスチック」という言葉をご存じでしょうか?私たちが普段からよく使用するプラスチック類が、河川を通じて海洋へ流れて環境中に蓄積されてしまったり、流れていく過程で細かくなってしまい、海洋生物や鳥類等への影響も懸念されています。

今回はそんなプラスチックによる影響について、概要をご紹介したいと思います。

海洋プラスチック問題とは

プラスチックは、加工しやすく量産できることや耐久性の高さ等から、積極的に生産され、生活に欠かせない存在です。2016年1月に発表された世界経済フォーラムの報告書によると、世界のプラスチック生産量は1964~2014年の50年間で20倍に増加し、さらに今後20年間で倍増すると予想されています。一方、プラスチックは外部からの衝撃や劣化によって細かくなることはあっても、自然には分解されず、環境中に排出されたものは溜まり続けてしまいます。そのため、陸域で非意図的に環境中に流出したプラスチック製品等が河川等を通じて大量に海に流れており、その量は年間800万トンと言われ、このままのペースが続くと、2050年には魚よりもプラスチックごみの量が多くなるという予測もされています。

プラスチックはどこから来るのか?

海洋に流出しているプラスチックごみのうち、約8割は陸域由来のプラスチックごみと言われています。また、陸域由来のごみは、意図的・非意図的なものを含めたポイ捨て・散乱ごみの一部が河川を通じて流れているとも言われています。つまり、海に接していない場所であっても、街中にポイ捨てされているごみ等が何らかの影響(風に飛ばされる、雨で流される、鳥が運んでいく等)で河川へ流れ、海洋に流出する可能性があります。

どのくらいプラスチックが流れているのか?

実際に海洋へ流出する量はどのくらいなのでしょうか?環境省の「日本におけるプラスチックごみの海洋へ流出総量や内訳データベース(流出量インベントリ)の推計・評価手法の検討結果」によると、マクロプラスチックごみは2,300~9,300t/年、マイクロプラスチック(5mm未満の破片等)は17,000~26,000t/年、合計ではなんと11,000~27,000t/年ものプラスチックが海洋に流れていると推計されています。なお、この推計は、発生源や品目においても評価できたものは限られており、発生源から海洋への流出経路や動態が考慮できていない等の課題もあります。そのため、関連する調査・研究成果等を踏まえ、引き続き精緻化・更新を行っていくこととしています。

参考文献:環境省「日本の海洋プラスチックごみ流出量の推計」
https://www.env.go.jp/water/marine_litter/survey/estimates_plastic_waste_in_Japan.html

環境管理センターがしていること

環境管理センターでは、令和4年度より、上記インベントリ調査のうち「陸域・河川でのごみの投げ捨て等」(マクロプラスチックごみ)の調査を含む環境省事業において河川に流れるごみの量や種類の調査を行い、流出量の推計に貢献しています。また、ポイ捨てごみがどのくらいあるのか、どのくらい環境中に滞留しているのか、清掃活動がどのくらい貢献しているのか等、どのようにしたら環境中へのプラスチックごみ流出が減らせるのかについての調査も実施しています。これらの調査等は今後も継続し、海洋プラスチック汚染問題の課題解決に役立てるよう、進めていきたいと思っています。

参考文献:
金子紋子, 長谷川亮, 鈴木隆央, 三輪芳和, 土村萌, 稲葉陸太, 大沼進&大迫政浩. (2023). ポイ捨て・散乱ごみの回収活動に関する基礎研究 (第 1 報). In 廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第34回廃棄物資源循環学会研究発表会 (p. 11). 一般社団法人 廃棄物資源循環学会.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmcwm/34/0/34_11/_article/-char/ja/

環境省「令和5年度河川・湖沼におけるプラスチックごみの海洋への流出実態調査等業務 報告書」
www.env.go.jp/content/000220883.pdf

最後に

海洋プラスチック汚染問題は、上述したように海や川に近い地域だけでなく、様々な場所や立場の方々の影響を大きく受けるため、みんなで協力して行動しなければ解決できない課題です。ぜひみなさんで一緒に、取り組んでいきましょう。(執筆:金子)