はじめに
におい・かおりLabでは、芳香・消臭・脱臭に関わるさまざまな製品の効果確認や、におい環境の評価試験を行っています。
これらの試験では、においを安定して再現できる空間づくりが欠かせません。
「においの評価は、試験を行う空間(環境)がとても大切」——日々、私たちはにおいの環境試験で、そう実感しています。
そこで、当社の試験コンセプトに基づき6畳間相当(約28.9 m³)のチャンバーを開発しました。
「チャンバー」とは
チャンバーとは、簡単に言えば“実験用の密閉された空間”です。
においをこもらせたり、外からの影響を避けたりすることで、製品の効果を正確に確かめることができます。
におい・かおりLabでは、このチャンバーを用途に合わせて自作し、試験を行っています。
一般的なチャンバーの大きさ(他社・汎用例)
| 用途 |
おおよその容積 |
備考 |
| 材料・部品レベルの臭気試験 | 20〜200 L(0.02〜0.2 m³) |
JISやISOで定められた小型タイプが多く、試験片や小物製品等の評価に用いられます。 |
| 機器・家具レベルの臭気試験 | 1〜5 m³ | 事務機器、建材、家具などの放散試験に用いられます。 |
| 空間再現(居室・車室など) |
10〜20 m³前後 |
自動車メーカーや住宅メーカーが、室内空間や車内環境を模擬して評価する際等に用いられます。研究機関やメーカーで採用されています。 |
一般的には、金属(ステンレス)や建材パネルなどの硬質素材を壁材として用い、温湿度調製機能を備えたものもあります。
今回は、この6畳間相当チャンバーの構造や性能評、におい環境試験への応用についてご紹介します。
6畳間相当チャンバーの構造と特長
6畳間相当チャンバーは、アルミフレームと38μm厚のポリエステルフィルムで構成されています。
この素材を採用することで、
・軽量かつ柔軟で設置
・撤去が容易壁面が透明で内部の確認が容易
・試験目的に合わせた加工が容易
といった特長があります。
チャンバー内の状況確認や、チャンバー内の空気を採取するための採取口、電源コードなどの設置加工が簡単にできます。
性能確認の結果
①密閉性能の確認
硫化水素ガスを注入し、サーキュレーターで撹拌したうえで、9か所の採取点で濃度を測定した結果、注入から10分後にはすべての測定点でほぼ想定濃度となり、内部の気体が漏れなく均一化されていることが確認されました。
② 非透過・非吸着性能の確認
①の状態で24時間放置後の硫化水素濃度を測定したところ、濃度減衰率は約5%にとどまり、非透過・非吸着性能が確認されました。
③ 換気性能の確認
換気回数0.5回/h(住宅居室基準相当)を想定し14.3 m³/hを給気した結果、排気量が12.2 m³/hとなり、給気・排気量が大きく異なることが無く、想定とおりの換気が行われることが確認されました。
6畳間相当チャンバーの応用
6畳間相当チャンバーの開発により、従来サイズのチャンバーでは難しかった居住空間に近いにおい環境の再現が可能になり、より現実的な環境下での臭気評価や、脱臭素材・消臭技術の性能評価など、幅広い試験が対応可能となりました。
最後に
当社は、「軽量・柔軟・高密閉」という特性をバランス良く備えた6畳間相当チャンバーの開発に成功しました。
今後は排気機構の改良や、他の臭気物質を用いた検証を進め、さらに信頼性の高いにおい試験環境の提供を目指してまいります。
当社では、においに関する様々な試験・調査・分析を行っております。
においでお困りの際は、ぜひ当社までお問い合わせください。(執筆:西島)
