PCBとは

PCBとはPoly Chlorinated Biphenyl(ポリ塩化ビフェニル)の略称で、人工的に作られた、主に油状の化学物質です。
PCBは化学的に安定で熱分解されにくく、電気絶縁性が高いという特徴があります。そのため、燃えやすい物質、不安定な物質、かさばる物質に替わる製品として需要が伸びていきました。特に絶縁性や高温耐熱性があるということからコンデンサーや変圧器のような電気機器に多く用いられ、PCBの出現によって電気製品はより小さく、軽く、安全なものになったと思われるようになりました。

PCBの歴史と法律(〜2000年)

環境中にPCBが広がっていることの最初の警告は1966年に欧米でなされました。
日本では、1968年夏、食用油の製造過程において脱臭工程の熱媒体として使用されたPCBが混入し、健康被害が発生しました。症状は、吹出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状のほか、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振など多様です。
その後、1972年に行政指導という形でPCBの製造・輸入・使用を中止しました。
また、翌年1973年には「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」が制定され、製造・輸入・新たな使用が禁止されました。

PCBの歴史と法律(2000年〜)

2001年に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)」が制定され、PCB廃棄物を保管している事業者に、保管状況の届出と2016年までのPCB廃棄物処理を義務付けました。
しかし、法律の施行後に微量のPCBに汚染された電気機器が大量に存在することが判明したことや、処理が想定よりも遅れていることなどを踏まえ、2012年に政令が改正され、処理期間は2027年3月末までとされました。(※国際的には、2004年に、PCBなど残留性有機汚染物質の廃絶・削減などを行うことを決めた「POPs条約」が採択され、先進諸国ではPCB廃棄物の処理が進んでいます。)

PCBの現在

PCB廃棄物は「高濃度PCB廃棄物」と「低濃度PCB廃棄物」に分類されます。高濃度PCB廃棄物はPCB濃度が0.5パーセントを超えるもので、それぞれ処理する施設が異なります。変圧器やコンデンサー等の東京事業エリア処分期日は既に2022年3月末に終了しています。詳細は環境省資料をご参考ください。

最後に

PCBは化学的に合成された有機塩素化合物ではありますが、有機塩素系の農薬と異なる点は、その毒性を利用する目的で作られたわけではないということです。また、農薬のように環境中に意図的に散布されてはいないのに、いつの間にか世界中に拡散し、生物に高濃度で蓄積してしまった、という点も特徴的です。
PCBの中毒などの毒性も一部の人たちの間でしか知られていなかったため、カネミ油症のような事件が発生してしまったという一面もあります。
このような痛い思いをいくつも経験して、「環境に重大かつ不可逆な影響を及ぼす可能性がある場合は、科学的に因果関係が十分に証明されていなくても規制を可能にする」という「予防原則」の考え方が欧米を中心に広がっていくことになりました。
私たちも日常的に化学物質を取り扱っていますが、その理化学性や生物に与える影響をしっかり理解して、余計な環境負荷を増やさないように心がけていきます。(執筆:杉江昌)

参考文献

PCB含有の有無を判別する方法(環境省)
 http://pcb-soukishori.env.go.jp/about/method.html 
PCB廃棄物処理対策の経緯について(環境省)
http://pcb-soukishori.env.go.jp/about/background.html 
ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の期限内処理に向けて(環境省) 
https://www.env.go.jp/recycle/poly/pcb-pamph/R3_04.pdf