はじめに
わたしたちの身の回りには、いろいろな音があります。
店内で流れるBGMや人の話し声、車のエンジン音や工事の音など、どんなに静かな場所であっても耳を澄ますと風の音や鳥の鳴き声などが聴こえてくると思います。
心地よく感じる音や不快に感じる音など様々な音がありますが、音はすべて「空気の振動(波)」であり、その波の「振幅、振動数、波形」の違いが音の「大きさ、高さ、音色」の違いとなって、わたしたちの耳に届いています。
音の大きさは、空気の振動の大きさに比例し、「音圧レベル」という指標を用い、「dB(デシベル)」と
いう単位で表します。
不快な音 = 騒音?
騒音とは一般に「好ましくない不快な音」のことを指しますが、環境問題としての騒音は、人間の可聴特性(A 特性)に合わせ測定し、環境基本法に基づく各規制基準との適合状況(基準値を超えているか否か)により判断されます。規制基準値は地域の類型や区分、時間帯によってそれぞれ設定されているため、同じ音の大きさであっても基準への適合状況は異なります。
基準値が守られなかった場合、市町村長や特別区長は必要に応じて改善勧告等を行うことができます。
騒音規制法に基づく規制基準値は、次のように区分されています。
例)工場・事業場騒音の場合
souonkiseih-pamphlet.pdf (env.go.jp)
身近な音の大きさ
図1に出てくる 40~70 デシベルとは、身の回りのどんな音なのでしょうか?
音の大きさの一例を図2に示します。
会話を例にとると、相手と1mの距離で会話する人の声は普通の声量で60デシベル程度、大声では80デシベル程度です。また個人差はありますが、わたしたちが聞くに耐えられる最大の音の大きさは約120デシベル程度と言われており、肉体的苦痛を伴うことから「痛域」とも呼ばれます。実際に騒音測定をしていると、何も聞こえない住宅街でもたしかに35デシベル程度あり、我々の身の回りに音があふれていることを実感します。
騒音調査
さて、ここからは実際に騒音調査はどのような流れで行うのか、工場や事業場における騒音調査を例に、「地点の選定」→「現地測定」→「解析・評価」の順にみていきます。
- ステップ1
- 地点の選定
調査目的に適した測定点を選定します。
騒音規制法に基づき工場や事業場の騒音を測定する際には、敷地境界において騒音レベルを測定します。
- ステップ2
- 現地測定
騒音計(音の大きさを測定する器械)を使用し、環境騒音に関する測定の規格であるJIS Z 8731に従い、騒音レベルを測定します。
加えて、調査員が音の発生源等の現場状況を記録します。
騒音測定は、その場で聞こえる全ての音を対象とするため、調査目的ではない音も含んでしまいます。鳴りやまないセミの声や車のアイドリング音、朝に頻繁に鳴く鳥などに手を焼くこともしばしば…(図3参照)。
このような調査目的でない音は、次のステップで解析時に除外処理をしていきます。
特にセミの鳴き声は大きく長く厄介なため、調査時期を夏以外にずらすことも多いです。
- ステップ3
- 解析・評価
測定した騒音レベルのうち、対象とする工場や事業場内から発生する調査目的の音と、それ以外の音(場外車両走行音、航空機通過音、隣接する別工場の作業音、鳥の鳴き声など)を区別し、調査目的に合った解析を行ったのち、時間区分ごとの騒音レベルを求め規制基準等との適合状況を確認します。
最後に
本コラムでは、音について触れながら、騒音の定義や測定方法に加え、騒音調査時のちょっと困ったことなどをご紹介させていただきました。当社には騒音調査のプロや各種コンサルタントもおりますので、騒音問題でお困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。(執筆:赤堀)
〜編集後記(ひとりごと)〜
私は学生時代にオーケストラ部でチェロ(バイオリンの大きいやつで低音が魅力)を弾いていました。部活柄クラシック音楽を耳にすることも多く、好んで聴く音楽もアカペラやゴスペルなどヒーリング系が多かったためか、ロック系の音楽は未だに少し苦手で…。コラムを書きながら、自分は痛域が低めなのかも?と気づいたりして。
みなさんが心地よく感じる音はどんな音でしょうか?
大まかな音の大きさであれば無料アプリ(”騒音計”や”サウンドメーター”で検索)でも測ることができますので、身の回りの音の大きさを測ってみると、今まで気づかなかったことが見えてくるかもしれませんね。