ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?

私たちは、普段の生活の中で電化製品や自動車といった製品や、飲食等のサービスを利用しています。これらの製品・サービスを提供するためには、野菜や食肉、金属、電気、熱といった様々な資源・エネルギーが使用されています。また、例えば冷蔵庫を使う時に電気を使う、捨てる時にトラックで運ぶなど、製品・サービスを作る時だけでなく、使う時、捨てる時にも資源・エネルギーが使用されています。

これらの製品・サービスのライフサイクル全体を通じて、環境にどれだけの影響を与えているかを把握するための手法をライフサイクルアセスメント(LCA)と言います。

図1は製品Aと製品Bを地球温暖化の原因となる二酸化炭素排出量の観点で比較した図ですが、生産段階だけを考えると製品Bの方が二酸化炭素排出量が少なく、環境影響が小さいように見えます(左図)。
一方、資源採掘から処理・処分までのライフサイクル全体で考えると、製品Aの方が二酸化炭素排出量が少なく、環境影響が小さくなります(右図)。
このように製品・サービスの環境影響を考える場合はライフサイクル全体で考えることが重要であり、その手法がLCAとなります。

どんなときにLCA調査を行うの?

LCA調査を行うケースは様々なケースが考えられますが、例えば以下のようなケースで行うことがあります。

・環境負荷を考慮した製品・サービスの開発や改善
・環境に配慮した公共政策の立案
・マーケティング
・環境ラベルの開示(エコリーフ、CFP等)
・環境コミュニケーションを行う時
・製品・組織レベルでの環境負荷(温室効果ガス等)の定量化・監視・報告

LCAで把握する環境影響領域は、大気汚染や化学物質、オゾン層破壊、富栄養化といった様々な領域がありますが、近年は世界的な地球温暖化対策の意識の高まりから、カーボンフットプリント(CFP)に注目したLCA調査が行われることも多くなってきています。

CFPの算定が必要になるケースの例として、ヨーロッパで販売されるバッテリーに関する規則を定めた欧州バッテリー規則があります。欧州バッテリー規則では、2025年からCFPの申告が義務付けられることとなっており、LCAの手法を用いた算定が必須となっています。

※商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量を、二酸化炭素(CO2)に換算して表したもの

LCA調査の手法

LCA調査の実施方法等については、国際的な規格であるISO14040シリーズが定められています。ISO14040シリーズでは、LCA調査の原則や要求事項等が定められています。

LCA調査は、以下の4つの段階で進められます。

ステップ1
目的及び調査範囲の設定

LCA調査を行う場合は、まずその目的や調査範囲を設定します。調査範囲としては、製品の機能単位(製品1kg当たり等)や対象地域、対象期間、把握する影響領域、収集するデータの種類(工場の電力消費量等の一次データ、文献からの二次データ等)などを設定します。

LCA調査は様々なケースで用いられることがあるため、目的を明確にし、目的を達成できる調査範囲を設定することが非常に重要です。

ステップ2
インベントリ分析

設定した目的及び調査範囲を踏まえて、原料調達や製造、流通、使用といった各段階の資源やエネルギーの投入量(インプット)と様々な排出物(アウトプット)の量を定量的に把握します。

例としてコピー用紙で考えると、インプットは、パルプを○kg使う、工場で電気を○kW使う、洗浄用薬剤を○kg使う・・・と把握していきます。アウトプットは、この工程から廃棄物が○kg発生する、汚水が○L発生する・・・と把握していきます。

インベントリ分析を行うと、どの段階で、何をどの程度使用して、何の環境負荷物質がどの程度排出されたかがわかります。

インベントリ分析で把握したインプット等から環境負荷を算定するにはデータベースを用います。インベントリ分析で使用されるデータベースとしては、産業技術総合研究所などが開発した「IDEAデータベース」や、国立環境研究所が提供している「産業関連表による環境負荷原単位データブック(3EID)」などがあります。

ステップ3
影響評価

インベントリ分析をもとに、対象とする製品のライフサイクル全体で、どの程度環境に影響を及ぼすかを定量的に評価します。②のインベントリ分析で調査目的を達成できる場合は、この段階は必ずしも行う必要はありません。

日本では環境影響評価を行う手法として「LIME」という手法が開発されています。LIMEでは環境影響を被害想定金額として数値化することができ、異なる影響領域間をまとめて評価することができます。LIMEを用いると、例えば紙カップ1kgのライフサイクル全体において、地球温暖化や水質汚濁、大気汚染といった様々な影響を総合した環境への被害想定金額(US$)を算定することができます。

ステップ4
解釈

①~③の結果について、目的及び調査範囲の設定に従って解釈を行います。完全性、感度、整合性などの点検を行い、LCA調査の結論を得ます。調査目的と得られた結果に齟齬がある場合は、各段階に立ち返って方法等の検討を行います。

最後に

LCA調査の実施方法等はISOに定められていますが、実際やってみると、この工程は算定に含めるべきか?、同じ工場で他の製品も作っているので対象製品の電力使用量がわからない!、ここで出た廃棄物は再利用しているがどう計算する?等、様々な課題が発生します。

このような課題は必ずしも正解があるものではありませんが、目的を見失わずに、どの条件を設定することが適当かを考えることも自社製品の環境影響を考える機会になり、LCA調査を行う意義のひとつと感じています。

 当社では、LCA調査支援のコンサルティングを行っておりますので、ご興味がある方はお気軽にお問い合せください。(執筆:小西)

<<もっと詳しく知りたい方へ>>

・環境技術解説 ライフサイクルアセスメント(LCA)(国立環境研究所)https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=57

・カーボンフットプリントガイドライン(経済産業省、環境省)https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/LCA_CFP/LCA_CFP.html