今回は、「日本国内における水銀の規制等の状況」と、「総水銀の分析方法」についてご紹介します。
水銀の特性
水銀は、常温で液体である唯一の金属で、揮発性が高く、様々な排出源から環境中に排出されています。排出された水銀は大気、海洋等を通じて全世界を循環する長距離移動性を有するほか、高い環境残留性や生物蓄積性を有しており、食物連鎖を通じた生物濃縮等によって高次捕食動物に高濃度に蓄積されやすい特性を持ちます。
水銀の毒性は化学形態の違いにより異なりますが、特にメチル水銀については、人の中枢神経系に対する毒性が強く、とりわけ発達中の胎児の中枢神経が最も影響を受けやすいとされています。
1956年熊本、1965年新潟で確認された水俣病は、工場より排出されたメチル水銀に汚染された海産物を長期に渡り日常的に摂取したことにより引き起こされた公害病となります。
身近な水銀仕様製品の例
水銀は、蛍光灯、体温計、血圧計など日常生活にも幅広く使用され、世界的にも水銀の性質を利用し金の採掘にも使用されてきました。
日本国内における水銀の規制状況について
日本国内では、総水銀と、前述のメチル水銀を含むアルキル水銀として、大気、水質、土壌等に規制値が設けられています。代表的な水銀規制法令と基準値は以下の通りです。
総水銀の分析方法
今回は、還元気化原子吸光装置での水質、固体試料中における総水銀の分析方法を簡単にご紹介します。
●STEP1 前処理
水質、固体ともに硫酸や硝酸で酸化分解します。
ポイントは①有機物の分解②水銀を揮散させない③水銀をすべて2価の状態にする事です。
水質は硝酸、硫酸、過マンガン酸カリウムを添加し2時間水浴加熱
固体は硝酸を添加し、ヒーターで加熱
●STEP2 測定
前処理した検液に塩化スズ溶液を添加し、酸分解により2価となった水銀を0価の金属水銀まで還元し、空気を送気しバブリングさせ気化させ分析します。
最後に
今回紹介した水銀分析方法以外にも試料を液体化することなく分析する方法や、気体を金の合金に捕集し加熱-気化させ分析する方法などがありますので、またの機会がありましたらご紹介いたします。 (執筆/竹田健二)
参考資料
1.環境省中央環境審議会「水銀条約を踏まえた今後の水銀大気排出対策について」