トリチウムとは
トリチウム(三重水素:3H, 元素記号T)とは、水素のなかま(放射性同位体※)です。トリチウム(T)は水素(H)よりも中性子が二つ多いので少し重たいですが、化学的な性質は水素とほとんど同じです。
※ 同位体:原子番号(陽子の数)が同じで中性子の数が異なるグループ
トリチウムの性質
トリチウムの性質の特徴は放射線(β線=電子)を出してヘリウム(He)に変わる点です。半減期は12.3年と比較的長く、すぐには減りません。
トリチウムの出すβ線
トリチウムが出すβ線はエネルギーが非常に弱く、紙一枚で簡単に遮ることができるので外部被ばくは問題になりません。
トリチウムの環境中での存在形態
主に水(HTO)の形で存在しています。
普通の水(H2O)と同じように自然界を循環しています。
トリチウムの主な発生源
トリチウムは大気上層で常に生成され、天然の存在量は1〜1.3 EBq※と言われています。
人工的には、過去の大気圏内核実験によるものや、世界中の原子力発電所等の運転に伴うものなどがあります。
※ 1 EBq = 1,000,000,000,000,000,000 Bq
トリチウムの人体への影響
トリチウムを口から摂取した場合、普通の水と同じように体の外へ排出され、ほとんど蓄積しません。トリチウムによる人体への影響は、セシウム137による影響の1/700程度、自然界にたくさんあるカリウム40と比べても1/300程度です。
トリチウムの基準値等
トリチウムの生態影響は非常に小さいので、基準値は放射性セシウムと比べて高く設定されています。
福島第一原発の処理水は1,500Bq/L未満まで薄められてから海洋に放出される見込みです。これはWHOの定めた飲料水水質ガイドラインと比べても十分に低いレベルです。
最後に
2021年4月、政府がトリチウムを含む処理水(ALPS処理水)の海洋放出の方針を決定しました。ALPS処理水は海水で薄められ、トリチウム濃度を十分低くしてから放出されるということですので安全面は全く問題ないと考えられます。
私たちが注意することは風評被害を起こさないことです。福島復興のためにも偏見を持たず、福島の食材を普通に食べていきたいですね。写真はトリチウム分析装置(液体シンチレーションカウンター)と私です。(無機分析グループ・飯島)
参考文献
トリチウムとその取り扱いを知るために(トリチウム研究会)
https://fukushima.jaea.go.jp/info/pdf/20140311.pdf
トリチウムの性質等について(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/008_02_02.pdf