塗膜とは

塗膜とは、構造物等に塗った塗料が乾燥・硬化して膜状になったものを指します。塗膜の役割は、錆や腐食等の劣化から構造物を保護することです。塗膜調査の対象は、橋りょう、鋼製タンク、船舶等があります。

塗膜調査の目的

塗膜剥離作業時の安全対策の判断を行う
橋りょう等の鋼構造物の塗膜中にはPCB・鉛・クロム等の有害物質が含まれていることがあります。事前に含まれている物質が分からないと環境汚染や塗り替え作業時のばく露などへの安全対策ができません。
剥離した塗膜を廃棄する場合は調査が必要 
PCB廃棄物・産業廃棄物・特別管理産業廃棄物のうちどの廃棄物に該当するかは調査しなければ分かりません。また、PCBには処分期限があり、調査対象年代に該当する場合は早急な対応が必要です。PCBは塩化ゴム系塗料に含まれており、1966年~1974年までに建設または塗装された橋りょう等が調査対象となっています。

処分期限

PCBの処分期間はこちらの通りです。塗膜は低濃度PCB廃棄物に該当する場合が多く、期限までに対応が必要です。

調査方法〜剥離方法について〜

塗膜調査は乾式採取と湿式採取の2通りがあります。湿式採取には、剥離剤によるばく露の危険性があります。過去には火災事故や、防毒マスクが破過して中毒症状が出た例、死亡例もあります。そのため当社では乾式採取を採用しています。

調査方法〜復旧について〜

塗膜採取後は錆による劣化から保護するために剥離箇所の復旧を行う必要があります。塗装の仕様には鋼道路橋防食便覧等があり、必要とする耐久性や仕上がり、今後の塗り替え工事等のメンテナンスを考慮して材料を選ぶ必要があります。

最後に

塗装において鉛、クロムは防錆剤、PCBは可塑剤として主に使用されてきました。
調査において大変だったことは、塗膜採取だけで8時間かかった事です。(平均は30分から1時間程度)
準備にも時間がかかり、構造物や河川の管理者、道路を使用する場合は道路管理者や警察と協議が必要となります。

調査では特殊な車を使う事もあります。 例えば、橋りょう点検車は橋の上からアームを伸ばし、橋の下にある“桁(けた)”へアクセスできる車両です。準備、調査、結果報告等で大変ですが、やりがいのある仕事です。(環境監視グループ・田中)

参考文献

ポリ塩化ビフェニル(PCB)使用製品及びPCB廃棄物の期限内処理に向けて(環境省)
http://pcb-soukishori.env.go.jp/download/pdf/full9.pdf