地歴調査とは

今回は、「地歴調査」についてご紹介します。 
「土壌汚染」という言葉を聞いて、どんな印象を持ちますか。多くの方が“自分とは縁遠いもの”と思うのではないでしょうか。これは土壌汚染が地中のものであり、無臭であることも多いため、発見されにくいことが要因の一つかもしれません。
 

しかし、もし自分の土地に土壌汚染が存在していた場合どうでしょうか。その土地は「売れない」、「資産担保価値がない」ばかりか、「土壌汚染の対策には莫大な費用がかかる」ことがあり、企業であれば経営に大きく影響する可能性があります。土壌汚染は、大変悩ましい問題なのです。 

では、土壌汚染のリスクをどうしたら把握できるでしょうか。私なら、先ずは「地歴調査」を行い、土壌汚染の可能性の有無を確認します。   

地歴調査は、資料の収集から始まり、聴取調査、現地調査、最後に報告書作成と進みます。以下に、具体的な内容を例示します。 

地歴調査の流れ

ステップ1
資料の収集

・一般公表資料の収集

調査対象地の土地・建物登記簿、地形図、住宅地図、公図、航空写真などの資料を収集します。資料は原則として戦前まで遡り、土地利用の変更がない場合にはおおむね10年間隔で収集します。

また、地形分類図や表層地質図、ボーリング柱状図など、調査対象地の土質や地下水位が分かる資料も入手します。これらの資料により土壌汚染が存在した場合、土質、地下水の状況により土壌中の汚染物質の挙動などを推測します。

・私的資料、公的届出資料の収集

土地の利用状況に関する資料を収集します。調査対象地が工場であれば、工場の建物・施設の配置図、使用している有害物質のリスト、有害物質の使用場所、廃棄場所、排水方法・排水経路が分かる資料や製造工程に関する情報、「社史」などを収集します。

ステップ2
聴取調査

従業員等への聴取調査を行い、これまでの土地の利用状況などを確認します。企業が立地する前の土地の利用状況、土地取得後の土地造成時の状況なども可能な範囲で確認します。また、有害物質を使用している場合には、有害物質の流出・漏洩事故や地中へ埋設処分の有無なども確認します。

ステップ3
現地調査

現地調査を行い、調査対象地の範囲、状況を確認します。特に有害物質の使用場所、保管場所、廃棄場所、移動ルート、排水経路、水処理施設など土壌汚染を生ずる可能性のある場所について確認を行います。また、収集した資料との整合性、収集した資料以外に土壌汚染を生ずる可能性のあるものがないかを確認します。

ステップ4
報告書作成

上記の資料の結果をまとめ、土壌汚染の可能性の有無について結果をまとめます。

また、土壌汚染の可能性が確認された場合には、「土壌汚染のおそれの区分図」を作成し、調査対象地のどこでどんな有害物質の土壌汚染の可能性があるかを明らかにします。

地歴調査の結果、「土壌汚染のおそれは考えにくい」との結論が確認されれば安心できます。また、「土壌汚染のおそれがある」との結論が確認された場合には、調査結果は土壌調査を行うための基礎資料として利用が可能です。

最後に

地歴調査は、土壌試料の採取、分析による土壌調査とは違い、その調査結果はあくまでも土壌汚染の「可能性」を知るまでに留まりますが、土壌汚染リスクを把握するための手段としては有効と考えます。

私ども、環境管理センターでは、これまで数多くの地歴調査を行ってまいりました。また、お客様より様々な土壌汚染問題についてご相談いただき、問題解決の実績がございます。もし、土壌汚染問題でお困りごとがございましたら、お気軽にご相談いただければ幸いに存じます。(執筆:伊藤俊郎)

出典
・※1 地形図:「2万5千分1旧版地図:八王子」国土地理院
・※2 航空写真:「空中写真」国土地理院
・※3 地形分類図:国土交通省、国土数値情報ダウンロードサイト、「土地分類基本調査図 地形分類図 八王子・藤沢・上野原」
・※4 表層地質図:国土交通省、国土数値情報ダウンロードサイト、「土地分類基本調査図 表層地質図 八王子・藤沢・上野原」