私たちが生活している土地には有害物質や油等による汚染が存在している可能性があります。これらの有害物質等を含む土壌を口に入れてしまったり、有害物質等を含む地下水を飲用してしまうと、人の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。また、健康への悪影響以外にも、土地の価値を下げる要因にもなります。
土地売買にあたり、土壌調査などで有害物質等による土地の汚染が見つかることが多く、汚染があった場合、多くの土地の所有者は“汚染の除去”を希望します。“汚染の除去”の方法では、「掘削除去」と呼ばれる方法が広く採用されています。しかし、費用が高額になることから、土地の所有者は“汚染の除去”に踏み切れないことがあります。
一方、「掘削除去」よりも費用が抑えられる「原位置浄化」という“汚染の除去”の方法も注目されています。
今回は「原位置浄化」とはどのようなものかご紹介します。
土壌汚染の除去等の種類は?
“汚染の除去”などの土壌汚染の対策方法は、環境省が示す土壌汚染対策法や油汚染対策ガイドラインに記載があります。方法の種類には、「封じ込め」や「生物処理」、「土壌ガス吸引」などがあり、冒頭の「掘削除去」や「原位置浄化」も方法の一つとして挙げられています。
土壌汚染対策法、油汚染対策ガイドラインに示される対策方法の例をご紹介します。図1は土壌汚染対策法ガイドライン、図2は油汚染対策ガイドラインに示されている“汚染の除去”などの対策方法です。
原位置浄化とは?
原位置浄化とは、「汚染土壌を掘削除去せずにその場(原位置)で微生物や薬剤等を注入し、土壌または地下水を浄化すること」です。
原位置浄化の種類
原位置浄化を用いた土壌・地下水汚染の対策方法はいくつもありますが、重要なポイントとして、対策方法ごとに適応可能な対象物質が限られていることに注意しなければなりません。そのため、方法を検討する上で、どの有害物質等による汚染か把握することが重要になります。
原位置浄化のメカニズム
原位置浄化は、
①「有害物質等が水に溶け出さないような状態にさせる方法(不溶化)」
②「気体になりやすい性質をもつ有害物質等を気化させ回収する方法(気化)」
③「化学物質や微生物等を用いて有害物質等を分解する方法(分解)」
④「地下水に溶け出した有害物質等を汲み上げて回収等する方法(溶解)」
などによって“汚染の除去”などをしています。
原位置浄化のメリット・デメリット
土壌汚染の対策方法はいくつもありますが、どれもメリット・デメリットがあります。
原位置浄化のメリット・デメリットは以下のことが挙げられます。
原位置浄化の事例紹介
当社で施工した油汚染に対する原位置浄化(化学的酸化分解)の事例の概要をフローに沿ってご紹介します。
○トリータビリティ試験(事前試験)
汚染土壌に薬剤を添加し、浄化効果と配合条件の検討を行います。
○原位置浄化
トリータビリティ試験の配合条件に基づきプラント内で薬剤を調整し、汚染土壌範囲へ薬剤の注入及び撹拌を行い、浄化を行います。
○効果確認
浄化した範囲の土壌を採取し、基準を満たしていることを確認します。(今回は油汚染対策ガイドラインに記載されている基準)
○整地
地盤が緩くなってしまったため、改良剤による、地盤改良を行い、地耐力を確保しました。
最後に
土壌・地下水汚染の対策技術は様々あります。当社は汚染状況、工期、費用に応じて施工方法をご提案します。
また、様々な事業ケースに応じた対策のご提案を、土壌汚染調査の計画段階から一貫して対応しますので、汚染対策の進め方にお困りの際には、お気軽にご相談ください。(執筆:町田)
(参考)
・土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂版第3.1版)(環境省)
https://www.env.go.jp/content/000076380.pdf
・油汚染対策ガイドライン-鉱油類を含む土壌に起因する油臭・油膜問題への土地所有者等による対応の考え方-(中央環境審議会土壌農薬部会 土壌汚染技術基準専門委員会)
https://www.env.go.jp/water/dojo/oil/full.pdf
・区域内措置優良化ガイドブック (改訂版) ―土壌汚染対策法に基づくオンサイト措置及び原位置措置を適切に実施するために―(環境省)
https://www.env.go.jp/content/900539568.pdf
・中小事業者のための土壌汚染対策ガイドライン~土壌汚染対策を円滑に進めるために~(改訂版)(東京都環境局)
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/r6-3dojouguideline_all