試験室では、環境水や工場排水といった液体、土壌や廃棄物といった固体の他に、環境大気や作業環境、工場の排ガスといった気体に含まれる成分の分析も行います。液体や固体は採取した試料を容器に入れて試験室に運ぶことができますが、気体はどうやって試験室に運ぶのでしょう?測定したい対象や成分により、様々な方法があります。今回は、その一部をご紹介します。

採取した気体の分析方法

気体をそのまま運ぶ

真空の容器やバッグと呼ばれる袋に直接気体を入れて、試験室に持ち運ぶ方法です。今回ご紹介するのは、揮発性有機化合物(VOCs)を測定する際に使用するキャニスター。内側を不活性処理した耐圧性のステンレス容器で、真空にした状態から、流量調整器を使ってゆっくりと空気を吸い込むことができます。

試料をそのままの状態で試験室に運ぶことができますが、容器の大きさによって持ち運ぶことができる量が決まり、大量の気体を運ぶことができません。

捕集材で運ぶ

気体そのものではなく、測定したい成分を捕集材(吸収液、吸着剤やろ紙など)に溶かしたり吸着させたりして持ち運ぶ方法です。通気させた空気の量が採取量となるので、多い場合には1500㎥程度の試料を採取できます。

例えば吸収液には超純水のほか、酸性水溶液、アルカリ性水溶液などを使用しますが、その際に気体と吸収液を接触させるのに使用するのがガス吸収瓶(バブラー)です。測定したい気体と液体(吸収液)が効率よく接触するように、細かい泡にして吸収させます。

 

空気中の粉じんなどに付着している物質を測定する場合には、ろ紙に粉じんなどを捕集します。目的に応じてろ紙の種類や大きさを選択します。PM2.5や粉じんに含まれる重金属類、気中のアスベストなどはこの方法で捕集します。

最後に

こうして分析室に運ばれた気体は、対象となる成分によって様々な方法で測定され、みなさまのお手元に試験結果をお届けしています。自治体等が実施する大気環境測定でも活躍していますので、街の片隅で大気環境測定の機材が設置されているのを見かけたら、触らず遠くからそっと眺めてみてください。(執筆:吉原朋美)