ヘリウムとは
ヘリウムは水素に次いで軽く、他の元素とほとんど反応しない極めて安定な元素です。
通常は気体として存在しており、-269℃という極低温まで温度を下げてやっと液体になるという性質を示します。宇宙では、約27%と大量に存在する元素ですが、地球の大気中には約0.0005%しか含まれていません。
ヘリウムの利用
上記のような特徴があるためヘリウムは我々の生活や産業の幅分野で利用されています。身近なところでは空気よりも軽いという性質を利用した風船やアドバルーンなどに充填するガスとしての利用吸引すると声が変わる変声用パーティーグッズなどもよく知られています。
また、化学反応をほとんど起こさないことから光ファイバーや半導体などの製造に欠かせないものとなっています。さらに、絶対零度付近まで冷やすことのできる極低温の液体ヘリウムは医療現場などで検査に使用されるMRIという装置や、超電導状態※1を作り出すための冷媒として使われています。
※1 ある温度まで冷却すると電気抵抗がゼロになる状態
環境測定分析分野でのヘリウムの利用
私たち環境測定分析の分野では、農薬類やダイオキシン類などの有機物質を分析するガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)のキャリアガス※2として用いられており、必要不可欠なガスとなっています。
※2 装置内に測定対象物質を運ぶために試料とともに送り込まれるガス
ヘリウムの供給不足問題
ヘリウムは天然ガスを採掘する際の副産物として得られており、日本では全量を米国やカタール等からの輸入に頼っています。昨今、世界の需給構造が変化しヘリウムの入手が困難になってきています。そのため、従来の使用量を確保できず、事業に支障が生じている状況も発生しています。これまでに何度か顕在化したヘリウム不足は、産出国製造設備の不具合や輸出段階での港湾労働者のストライキといった一過性の原因であったのに対し、今回の状況は、簡単には解決しない可能性があります。
ヘリウム代替技術
このような状況に対応するために、環境測定分析の分野では、ヘリウムを使わず他のガスを用いて測定分析ができるよう、研究や技術検討が進められています。ヘリウムガスを使用するよう規定されている現行のJISや公定分析法などを変更していくための取り組みも始まっています。
最後に
非常に貴重な資源であるヘリウムですが、世界的な需要が高まっている反面、供給量の大幅な増加はあまり見込めない状況であることから、価格は上昇傾向となっているようです。限りある資源を有効活用するという観点から、我々技術者もより積極的にヘリウムを代替する技術への取り組みを進める時期がきているのかもしれません。(執筆/石井善昭)