はじめに
最近「オーバーツーリズム」という言葉をよく耳にします。これは、観光客が特定の地域に集中しすぎて引き起こされる問題や、その悪化した状態を指します。この現象は世界中で深刻な問題となっており、日本でも環境や地元住民の生活にさまざまな影響が出ています。これは持続可能な観光を実現するために早急に対処すべき課題の一つです。
本コラムでは、「オーバーツーリズム」の問題と、環境省が取り組んでいる対策について紹介します。
オーバーツーリズムとは
観光庁の「令和元年度版 観光白書」によれば、オーバーツーリズムは次のように定義されています。
「UNWTO(国連世界観光機関)は、2018年9月に発行した「‘Overtourism’ ? – Understanding and Managing Urban Tourism Growth beyond Perceptions」において、オーバーツーリズムについて以下の2つの定義を紹介している。
- 観光地やその観光地に暮らす住民の生活の質、及び/或いは訪れる観光客の体験の質に対して、観光が過度に与えるネガティブな影響。
- 訪問者が多すぎて、その地域での生活または経験の質が受け入れられないほど悪化したと、地元の住民や訪問者が感じている場所。」
つまり、オーバーツーリズムとは観光の過剰によって、地元住民や観光客の満足度が著しく低下する現象を指します。日本では、「観光公害」がオーバーツーリズムの訳としてよく使われています。
日本でもオーバーツーリズム問題が起きています・・・
神奈川県鎌倉市では、アニメ「スラムダンク」の舞台となった踏切で写真を撮影するために多くの観光客が訪れるようになっています。この人気スポットは、アニメファンにとって憧れの地となり、特にSNSの普及によってその魅力が世界中に広まっています。しかし、観光客が踏切周辺に集まり、写真を撮るために道路上に立ち入ることが多く、交通の妨げとなったり、私有地の無断立ち入りとなったり、ポイ捨て問題などが発生しています。これにより、現地ではオーバーツーリズムが問題となっています。
環境省としての取組み
令和5年10月18日、観光立国推進閣僚会議において「オーバーツーリズム未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」が決定され、政府は持続可能な観光地域づくりのための対策に取り組むことになりました。
環境省では、自治体と民間事業者が連携したポイ捨て・発生抑制対策モデル事業を実施し、その効果を検証します。これにより、観光地でのごみ問題を防止し、観光地の魅力向上を図る優良対策を全国に展開し、環境保全と観光振興の両立を目指します。
当社は、このモデル事業の支援事業者として、各モデル事業の実施支援や結果取りまとめ支援とともに、優良かつ先進的で観光地の魅力向上につながるポイ捨て・発生抑制対策等を取りまとめるコンサルティングを行っています。
環境省のモデル事業は以下に紹介します。
最後に
オーバーツーリズムの問題は、技術の力を借りることで効果的に対処できると期待されています。技術者として、これらの技術を用いて観光地の未来を守るためのソリューションを提供することが求められています。当社では、環境問題に対して、現状分析から施策の策定まで一貫したコンサルティングサービスを提供しており、オーバーツーリズム対策にも専門的な知識を有しています。お気軽にお問い合わせください。(執筆:牛)