アスベストとはどんなものでしょうか?どんな危険があるのでしょうか?
法律などを交えながらアスベストについて少しご紹介できればと思います。
アスベストとは
アスベストは、天然の繊維状珪酸塩鉱物の総称で、「クリソタイル、アモサイト、クロシドライト、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライト」に分類され、「繊維状」の形態をしたものを「アスベストもしくは石綿」と呼びます。
優れた性質(耐熱性、防音性、絶縁性など)があり、安価で入手できることから、多くの建築資材として長い間利用されてきました。
出典:目で見るアスベスト建材(国土交通省)H18.3 ※1
日本国内にも石綿鉱山がわずかに存在していましたが、多くのアスベストは輸入に頼っており、1930年頃から2003年頃まで輸入されていました。
アスベスト繊維は極めて細いのが特徴で、通常、繊維の束として存在しており、最後の1本の単繊維は最も細いもので0.02μmであり、花粉用マスクでは、アスベストの単繊維は捕まりません(花粉は30μmでアスベストの1500倍)。
人がアスベスト繊維を一定量吸い込むと、長期の潜伏期間(平均40年)を経て、呼吸器系他に肺がん等のアスベスト関連疾患を発症し、年々死亡者数が増加傾向にあります。
関係法令について
アスベストは、2012年に石綿製品(0.1%重量)の製造が全面禁止になるまでに、段階的に規制されてきました。
2005年にクボタショックといわれる報道がなされたことで、社会的なアスベスト健康被害の問題が急浮上してきた現象であるとされています。
2020年4月に大気汚染防止法、石綿障害予防規則の大きな法改正がなされ、現在に至っています。
具体的には、全ての建材が規制対象になり、事前調査方法の法定化や事前調査の記録報告の義務付け、直接罰の創設などが挙げられます。
調査方法等について
建物を解体、改修する際には、事前にアスベスト建材の使用の有無を確認することが義務化されました。(2020年10月、2021年4月に大気汚染防止法、石綿障害予防規則の改正により調査方法[事前調査]の法定化)
ポイントをまとめると以下のようなことが掲げられます。近いところでは、事前調査を実施、分析する者は、2023年10月以降、有資格者が行う必要があります。
■事前調査では、工事対象となる全ての部材について調査が必要。
■事前調査は、設計図書などの文書および目視による調査が必要。
■事前調査で石綿の使用の有無が明らかにならなかった場合には、分析による調査の実施が義務
■事前調査を行う者の要件
令和5年10月1日着工の工事から事前調査は厚生労働大臣が定める講習を修了したものが行う。
■石綿事前調査結果報告
令和4年4月1日から「石綿事前調査結果報告システム」による報告が義務化。
■報告対象となる工事
※ 石綿の有無によらず以下のいずれかに該当する場合には報告が必要です。
① 解体部分の床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事
② 請負金額が税込100万円以上の建築物の改修工事
③ 請負金額が税込100万円以上の特定の工作物の解体または改修工事
④ 総トン数が20トン以上の船舶(鋼製のものに限る)の解体又は改修工事(※令和4年(2022年)1月13日厚生労働省令第3号により追加)
最後に
当社では、様々なニーズにこたえるため、アスベスト問題に対応してきました。東日本大震災、熊本地震が起こった際には、現地に入り、復興支援の一環として調査対応させて頂きました。また、アスベスト問題に関する国案件にも多数関わってきています。
これらの経験を生かし、現在、特に事前調査を行うことに力を入れています。
2030年頃には、建物の老朽化にともなう解体のピークが来ると想定されております。
アスベスト問題でお困りの方がいらっしゃいましたら是非ご相談下さい。(執筆:齋藤)
画像引用元
※1:目で見るアスベスト建材(国土交通省)H18.3 P.4、P.5 (https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/010331_7/01.pdf)(最終アクセス日:2023年12月5日)
※2:環境再生保全機構ERCA(エルカ)HP(https://www.erca.go.jp/asbestos/what/whats/ryou.html )(最終アクセス日:2023年12月5日)
参考文献
・実務ですぐ役立つ!これだけは知っておきたい建築物のアスベスト対策(一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会)
・建築物の解体等に係る石綿(アスベスト)飛散防止対策マニュアル(令和4年3月 東京都環境局)
・建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和3年3月 厚労省・環境省)
・石綿総合情報ポータルサイト(おすすめサイト) http://www.ishiwata.mhlw.go.jp/