1.大型物流・データセンターの立地急増とその環境影響リスク
近年、物流需要の拡大やITの普及拡大によって、大型の物流センター(Logistics Center:以下、LC)やサーバー類・通信機器を多数集結するデータセンター(Data Center:以下、DC)が国内外で急増しています。
現代の私達の便利で快適な生活は、身の回りの製品や設備を生む産業やその活動を支える物流やIT技術の恩恵を受けています。
他方で、関連施設であるLCやDCの建設や稼働に伴う環境影響が懸念されています。LC・DCはともに大型施設であり、住居地域や市街地に近接するケースも見られ、国内の各地で近隣住民との紛争が増加しつつあります。施設の建設計画の撤退を余儀なくされた事例もあります。
住居地域や市街地近傍に立地する等のLC・DCによる主な環境影響は表1のとおりです。

LCでは多数の搬入出車両の走行による周辺地域での交通量の増加、車両排ガス、搬入出時や荷役時の騒音が近隣への主な環境負荷になります。
DCではサーバー等の動作により生じる高温の発熱を機器の性能維持や出火防止のために常時冷却する必要があり、多量の電力消費と温室効果ガス排出が伴います。
また、従来主流の空冷方式に加え、最近は冷却水として地下水を多量に揚水利用する液冷方式の施設も存在し、地盤沈下や地下水源の枯渇リスクが指摘されています。また、冷却設備等からの近隣への騒音問題もあります。
LC・DCの建物高さは関東の事例で敷地内最大55mや70m超の事例を含む数十m規模、面積も国内で数千から数万m2規模を含む広大で超大型の施設が増加しています。
施設の規模等の立地要件を満たす用地が限定されることから、住宅密集地への近接や、既存の緑地や動植物等の生態系の損失を伴って建設される場合があります。
2.LC・DC施設による環境負荷低減や防止のための課題
LC・DCの大型化や急増は、人手不足解消のための設備自動化対策や集約効率化、ネットショッピング等のEC市場拡大による配送需要の増加が関わっているとされます。
DCの増加は、私たちの日常生活でのスマホやPCでの動画視聴・通信・検索・買い物・AI利用や、その基盤となる産業界のクラウドサービス・ビッグデータ活用・AI利用の拡大等からの多量のデータ送受信によりサーバーへの負荷が世界中で急増していることが背景にあります。
本稿ではLC・DCに焦点を当てていますが、その背景には、環境負荷への配慮よりも利便性を優先してきた私たちの生活の在り方があります。現代の生活様式そのものを見直すことが求められています。

3.事業の構想段階や計画段階からの環境配慮
LC・DCでは物品やデータが保管される施設の性質上、自然災害が少なく、交通の利便性や治安に優れた土地への立地が好まれます。DCについては多量の冷却水を用いるため、地下水資源が豊富な土地も重要視されます。そしてこのような条件を満たす土地は、多くの場合、既存の住居地域やその周辺と重なります。したがって、特に住居地域の近傍における事業計画は、法規制に沿った計画であったとしても、環境影響リスクが高くなり、地域社会との摩擦も起きやすくなります。
そのため、事業地の選定においては、事業の構想段階や計画段階から、十分に検証を行い、環境負荷の高い事業の方法や環境影響リスクのある土地を回避することが賢明な選択肢となります。
国の今後の産業政策においては、“AI活用を通した成長を目指す”と謳われており、同時に「安定的にDC立地を進めるには地域社会との共生が不可欠」*1としています。
地域に受容される事業を目指し、環境負荷を踏まえた計画検討を早い段階から行うことで、事業撤退リスク、環境影響や交通事故等による健康被害が生じた際の損害賠償リスク等の紛争対応コストの低減にもつながり、円滑で継続的な事業運営を行うことにつながります。
*1:「GX戦略地域制度を通じたGX産業クラスターの創出 – 中間とりまとめ(案)-」(令和7年12月11日 内閣官房GX実行推進室)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/sangyoritchi_wg/dai7/shiryo2.pdf
4.地域住民に寄り添ったアセス評価手法及び対策の採用、十分な情報開示の重要性
事業計画の円滑な推進のために、事業構想段階における環境影響リスクの少ない立地選定が最も重要ですが、その前提の上でさらに、地域住民へ寄り添う姿勢や環境影響の抑制や低減のための具体的な対策の情報開示や地域とのリスクコミュニケーション方法における努力が望まれます。
2025年9月の環境アセスメント学会年次大会におけるポスター発表では、LC・DCの最近の紛争事例を踏まえた環境影響リスクと環境負荷低減のための課題として下図のように提案を行いました。ポスターへは多くの方々に関心を持っていただきましたので、今後は頂いたご意見や感想を踏まえて、提案内容をブラッシュアップしてまいります。
図1で提案した内容として各主体別に、
・「行政」においては、‟都市計画や地区計画の策定の構想段階からの市民参加、アセス審査時の市民意見の検討方法の改善等”
・「事業者」においては、“丁寧な情報開示、立地場所の移転も視野に入れたベスト追求型”や“地域社会が受忍可能な環境保全目標のクリア型”の計画の検討
・「アセス受託者」においては、“紛争リスクのない立地選定や住民目線の評価や対策手法による円滑な手続きから得られる費用対効果への事業者の理解を促すように努めること”
が重要と考え、図示しております。
ポスターへの皆様から頂いた反応で共通していたことは「LCやDC施設が今後どのように地域融和に努めていくことができるかを注視したい。地域との紛争は避けることが望ましい。」との点と思っております。
私たちの生活を支える先端技術や産業による環境負荷を極力低減するとともに、地域社会との融和に向けて、環境アセスメント手続きを通じたアプローチに加え、地域の方々に寄り添う対策や、持続可能な社会構築のための事業活動の計画とのバランスを考慮した業務対応を目指したいと考えています。(執筆:基盤整備・研究開発室 青木玲子)
