- 2026-08-19
- 技術者コラム
【技術者コラム】ネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みについて
○はじめに
近年、地球規模で取り組むべき重要な課題として、気候変動対策である「カーボンニュートラル」とともに、生物多様性の保全と持続可能な利用を目指す「ネイチャーポジティブ」の実現が掲げられています。
当社においても、近年、再生可能エネルギー事業(風力・太陽光)の環境アセスメントに携わる中で、「カーボンニュートラル」に加えて「ネイチャーポジティブ(生物多様性の損失を止め、反転させる)」に対する発電事業者の企業姿勢が求められる場面を目にするようになりました。
そこで、今回は、「ネイチャーポジティブ」に着目し、国際的な取り組みや国内の戦略のほか、特に企業の関わりが期待される取り組みとして「30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標」と「ネイチャーポジティブ経済の実現」の概要についてご紹介いたします。

出典:環境省ホームページ「ネイチャーポジティブポータル 国の取り組み」
(https://policies.env.go.jp/nature/nature-positive/efforts/index.html)
○ネイチャーポジティブに関する国際的な取り組み
生物多様性の保全は、世界全体で取り組むべき重要課題の1つであり、1992年に採択された「生物多様性条約」以降、締約国会議(COP)においてさまざまな取り組みが検討されてきました。
2022年12月、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、新たな生物多様性に係る世界目標として「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。
この枠組では、2050年ビジョンとして2010年の愛知目標から引き続き「自然と共生する世界の実現」を掲げており、その具体的な姿を4つのグローバルゴールとして示しています。
また、「自然を回復軌道に乗せるために、生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとる」、いわゆる「ネイチャーポジティブ」を2030年までに実現するミッションとして掲げています。
そのために、世界全体で取るべき緊急行動として3つのグループからなる23のグローバルターゲットを定めています。

出典:環境省ホームページ「昆明・モントリオール生物多様性枠組-ネイチャーポジティブの未来に向けた2030年世界目標-」
(https://www.env.go.jp/content/000296180.pdf)

出典:環境省ホームページ「昆明・モントリオール生物多様性枠組-ネイチャーポジティブの未来に向けた2030年世界目標-」
○ネイチャーポジティブに関する我が国の戦略
我が国では、この「昆明・モントリオール生物多様性枠組」 に対応するため、2023年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」を策定しました。
この計画では、2050年ビジョンに「自然と共生する社会」を、その実現に向けた2030年ミッションとして「ネイチャーポジティブ(自然再興)の実現」を掲げています。
また、この目標の実現に向けて、5つの基本戦略を掲げ、基本戦略ごとに15個の状態目標(あるべき姿)、25個の行動目標(なすべき行動)を設定しています。
さらに、行動計画では関係府省庁の具体的施策も示しており、取り組み状況や成果、課題、今後の方針等を取りまとめることで、計画の進捗状況を点検しています。

出典:環境省ホームページ「生物多様性国家戦略2023-2030実施状況の中間評価」
(https://www.env.go.jp/press/press_02975.html)
○30by30目標
「30by30目標」は、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標です。これは、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」のグローバルターゲットの1つに位置付けられています。
我が国の「生物多様性国家戦略2023-2030」においても、2030年までのネイチャーポジティブの実現に向けた行動目標の1つとして位置付けられています。「30by30目標」では、国立公園等の保護地域の拡張や質の向上にとどまらず、民間等の活動により生物多様性保全が図られている地域(OECM)を国が「自然共生サイト」として認定し、目標の達成を目指しています。
2026年3月時点の「自然共生サイト」は569か所あります。
また、「30by30目標」に対する保護地域とOECMの合計割合は2025年8月時点で、陸域約21.0%、海域約13.3%となりました。
「30by30目標」及び「自然共生サイト」の詳細は、以下の環境省ホームページから確認できます。
▶環境省ホームページ「30by30」
(https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/)
▶環境省ホームページ「自然共生サイトについて~認定のメリットや取組事例~」
▶環境省ホームページ「認定サイト一覧」
(https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/kyousei/nintei/index.html)
○ネイチャーポジティブ経済の実現
「ネイチャーポジティブ経済の実現」は、「生物多様性国家戦略2023-2030」の基本戦略の一つに位置付けられており、2024年3月に「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」が策定されました。
この戦略では、経済活動の自然資本への依存と損失が社会経済の持続可能性に対する明確なリスクであり、ネイチャーポジティブ経済への移行の必要性があること、ネイチャーポジティブの取り組みが企業にとって単なるコストアップではなく、自然資本に根ざした経済の新たな成長につながるチャンスであることを示し、企業の実践を促しています。
さらに、2025年7月には「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025-2030年)」が策定され、ネイチャーポジティブ経済の実現に向けた国の施策の方向性と、企業・金融機関・投資家・消費者・地方公共団体等を含むステークホルダーに期待するアクションについて示されています。
また、環境省では「ネイチャーポジティブ経営推進プラットフォーム」を開設し、プロジェクトマッチングを通じてさまざまなステークホルダーと手を組み、新規事業の創出や共創の機会につなげることで、ネイチャーポジティブ経済の実現を目指しています。
「ネイチャーポジティブ経済」の詳細は、以下の環境省ホームページから確認できます。
▶環境省ホームページ「ネイチャーポジティブ経済移行戦略について」
(https://www.env.go.jp/page_01353.html)
▶環境省ホームページ「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025-2030年)」
(https://www.env.go.jp/content/000333089.pdf)
▶環境省ホームページ「ネイチャーポジティブ経済移行に向けた企業価値向上ストーリー集」
(https://www.env.go.jp/content/000409115.pdf)
▶環境省ホームページ「ネイチャーポジティブ経営推進プラットフォーム」
(https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/npeplatform/index.html)

出典:環境省ホームページ「ネイチャーポジティブ経済移行に向けた企業価値向上ストーリー集」
○最後に
従来の環境アセスメントは、開発による重要な自然環境への影響を回避・低減するといった観点で、生物多様性への負のインパクトを抑制する役割を担っていました。これからは、その局所的な影響の回避・低減だけではなく、「カーボンニュートラル」や「ネイチャーポジティブ」といった社会経済への正の影響も踏まえ、自然との共生を目指す企業の総括的な事業展開が望まれています。これは事業の種類や規模にかかわらず、全ての企業の事業活動において意識すべき共通の課題であると考えます。
当社では、再生可能エネルギー事業や土地区画整理事業、再開発事業、大型商業施設の新設事業、超高層ビルの建設事業、工場の建替事業等、さまざまな開発行為の環境アセスメントに係る豊富な実績と業務経験を有しています。また、環境調査、分析、コンサルティングといった環境に限らず幅広い分野の専門知識を有する社会基盤コーディネーターとして、さまざまな側面から「自然と共生する社会」の実現に貢献したいと考えております。事業においてご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。(執筆:志田)