2023年8月28日~30日にフィリピン マニラにて開催された第6回アジア産業衛生ネットワーク学会(Asian Network of Occupational Hygiene Conference。以下、ANOHと記載。http://anoh.net/html/)に参加させて頂きました。

 

2022年も第6回、本年も第6回となっていますが。2022年は国際労働衛生学会(International Occupational Hygiene Association)内でのANOHセッションを1回と数えての6回、今年はANOH単独開催だけを数えて6回、という訳です。このあたりの表記におおらかなところも、アジアっぽいのかもしれません。

学会全体としては13カ国から148名参加、12基調講演、11シンポジウム講演、28口頭発表、27ポスター発表があり、大変盛況でした(写真1)。日本からの参加者は9名(内2名はメーカー展示)で、1基調講演、3口頭発表、3ポスター発表、その他、座長や各国比較でのシンポジウムでのシンポジストを複数されていました(写真2)。

ANOHは学会名に「ネットワーク」が入っているように、アジアの産業衛生に関わる研究者や技術者間でのネットワーク構築が大きな目的の一つです。アットホームな雰囲気で、それぞれの国で活躍されている研究者やオキュペイショナル・ハイジニストの方々と意見交換しやすく、国をまたいでの共同研究の相談がしやすい学会です(写真3)。アジア各国で協力して労働環境の安全や衛生レベルを上げていこう、助け合おうという雰囲気もあり、日本からの発表は歓迎されています。英語が苦手な発表者の場合は、他の英語が得意な日本人参加者が日本語と英語の通訳を担うなど、日本人間での助け合い、交流もありました。

私はアスベストの測定方法について発表させて頂いたのですが、台湾とタイから4つ質問を頂き、アスベスト管理はアジア共通の課題だと改めて感じました(写真4)。

以下に、興味深かったトピックスを紹介します。
・ニュージーランドにはフィットテストの実施機関がなく、オーストラリアの商業的実施機関が協力して実施
・職業性有害大気のばく露で860,000死亡/年(WHO)
・結晶性シリカばく露による死亡者数は海外でも問題
・メンテナンス業務の化学物質や粉じん等の複合ばく露は、
 測定などもされておらず実態把握されてないが問題があると考えて調査中(韓国)
・台湾の許容濃度は888化学物質と4タイプの粉じんに設定
・アジア各国での許容濃度についても、それぞれ発表あり

また、昼は研究者として発表や意見交換を行い、夜は素の自分で参加者との交流を深めるのがANOH流です。夜は開催国の文化に触れ(写真5、6)、参加者も歌い踊ることが定番です。私も日本人代表になったつもりで踊り、参加者との交流を深めました(写真7)。2024年はマレーシア、2025年は台湾、2026年は日本で開催予定です。産業衛生に関係している方々は、ぜひご参加を検討頂けますと幸いです。

(基盤整備・研究開発室 技術部長 飯田裕貴子)